2011.7.19

漢方と美容2(便秘とデトックス)          
                         

                         
金匱会診療所薬局長 針ヶ谷哲也


 今回の漢方と美容は体の表面ではなくて、お腹の中(腸)をきれいにするお話です。しかし、この腸をきれいにすることが、表面の美容にも関係してくるものと思われます。最近ではデトックスといってサプリメントの摂取や入浴などで、体内の有毒な物質を排出しようとする方法が流行っていますが、このような概念は、すでに2千年も前から漢方の書物に記載されていました。この方法には汗法(発汗とともに邪を除く方法)、吐法(吐かせて悪いものを取り除く方法)、下法(悪いものを下して取り除く方法)などがあり、いずれも漢方の治療原則の一つです。その中で便秘に関係が深いのが3番目の下法で、瀉下法(しゃげほう)ともいって、字の通り下剤を用いて下す方法なのです。
 この瀉下法は便秘でお腹が張って苦しいときは勿論ですが、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患で便秘気味の場合や何か体に合わないものを食べてしまい蕁麻疹が出た場合、その他打撲や骨折などの初期にも行うことがあります。これは悪いものを取り除いたり、瘀血(おけつ)という血液が体内に瘀滞(とどこおっている)している状態を取り除くという漢方の概念なのです。
 用いる生薬としては大黄(だいおう)が圧倒的に多いですが、病態に応じて芒硝(ぼうしょう)や桃仁(とうにん)麻子仁(ましにん)などの生薬を一緒に使用します。
 よく見られる漢方のエキス製剤(エキス顆粒)ではあらかじめ処方内容が決まっていますので応用することは難しいですが、本来の漢方のスタイルである煎じ薬ではその患者さんの体質に合った処方に大黄だけを加えてこの瀉下法を応用することが可能です。
 煎じ薬による実際の臨床では、どのような病気でも便秘気味の場合には患者さんの処方にこの大黄が加えられて、便通をコントロールしています。このようなことを行うことで処方を強く作用させたり、慢性の病気を動かして治り易くさせたりしているのです。この場合、便秘の具合によって加えられる大黄の量も様々です。又、体のすごく弱い方で大黄などの下剤を用いるとお腹が痛くなってしまうような場合には芍薬(しゃくやく)蜀椒(しょくしょう)などで便通がつくこともあります。
 このように腸をきれいに保つということは、病気の治療だけでなく美容や健康維持という観点からも非常に大切なことなのです。

芍薬

蜀椒

麻子仁

桃仁

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芒硝

大黄(刻み)

大黄(生:しょう)