何をしているのかな?漢方の診察は 〜脈診てお腹診て、どうするの?〜 1
             
                       金匱会診療所名誉所長 山田光胤  

 漢方の医師にかかると、話を聞いてから手首を握って脈を診て、その後ベッドに寝かされてお腹に触られる。ところどころ痛い所を押されたりもする。何故だろうと思っている人もあるでしょう。
患者さんが『昨日か一昨日頃から何故か頭が痛い』と云って来た時、私は「風邪かな、食べ過ぎではないだろう」と思う。
そこで「咽を見せて下さい」と云って口を開けてもらい、懐中電灯で照らしてみて、喉の奥が赤ければ「あっ、風邪だな」と分かる。

患者さんが『風邪らしくて、だるく、気持ち悪いです』と云って来た時「ちょっとみせて」と云って手首の脈を診る。そして、「あっ風邪の引き初めですね」
と分かる時と、「一寸分かりにくいから、お腹をみせて下さい」と云う時がある。お腹に触ってみて、「あっ、やっぱり風邪ですが、もう4、5日以上経っていますね」
と云うこともある。脈を診た時、指を軽くあてただけで分かる表在性の脈は浮脈といい、風邪の引き初めに出る脈です。 脈がはっきりした浮脈でなくなり、少し指に力を入れれば分かるようになった脈は、沈脈といい、風邪を引いてから4、5日以上経った時の脈です。浮脈から沈脈に変わる境目だと、分かりにくいことがあるので、その時はお腹に触って確かめます。

 すると、下の肋骨(肋骨弓)の直ぐ下の腹筋の一部に、少し硬い所が現れて其の処を押すと、患者さんが痛がったり、苦しがったりする腹壁症状(腹証)が見られれば、風邪を引いてから、4〜5日以上経った証拠です。脈を診るのを脈診といい、風邪の引き初めに全身の体調が変化し、熱発の準備で心臓からの血液の拍出量が増えた時、浮脈になると思われます。
この時、脈を打つ数が、医師の一呼吸の間に四拍打つのは平脈で平熱であり、五拍以上打てば体温上昇で、38℃かそれ以上、四拍半ぐらいならば37℃前後の微熱です。

 漢方の医師は、体温計を使わないでも、その程度のことは分かります。これらの事は、唯分かれば良いのではなくて、夫々の場合に異なる治療方針を立てるのです。(漢方の診察2につづく)