漢方治療の実際
★慢性頭痛・偏頭痛★
漢方治療の適応となる頭痛は、発作性の激しい頭痛を起こす偏頭痛や、緊緊張性頭痛など機能的疾患による頭痛となります。また、慢性副鼻腔炎に伴う頭痛、高血圧に伴う頭痛など原因のはっきりしている頭痛には、其の原疾患の治療を行うことで頭痛も解消します。しかし、慢性頭痛の原因には、脳腫瘍や慢性硬膜外血腫など、現代医学的治療が必要なものもあるので、そのような疾患を除外することは非常に重要です。
漢方治療では陰陽、虚実の判別が重要で、痛みの様相の特徴も参考になります。
【頭痛に頻用される漢方処方】
①大柴胡湯(だいさいことう)
実証で、胸脇苦満と呼ばれる季肋部の抵抗圧痛の腹証が認められる。
②柴胡加竜骨牡蛎湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
実証で胸脇苦満があるが、その他に不安、不眠、動悸などの精神神経症状がある。
③淸上蠲痛湯(せいじょうけんつうとう)
中間症から実証に用いる。慢性で治りにくい頭痛、顔面痛に用いる。
④釣藤散(ちょうとうさん)
中間症。朝方の頭痛、高血圧に用いる。
⑤五苓散(ごれいさん)
虚証から実証まで広く用いられる。口渇と尿量減少が目標となる。水毒を改善する。
⑥半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)
虚証で胃腸虚弱がある。頭重感や何かが頭に被さっているような頭冒感、
めまい等に用いる。
⑦桂枝人参湯(けいしにんじんとう)
虚証で胃腸虚弱があり、のぼせ(気の上衝)による頭痛に用いる。
⑧呉茱萸湯(ごしゅゆとう)
偏頭痛、発作性の激しい頭痛に用いる。頭痛の際に嘔吐を伴うこともある。
冷え性で頭痛発作の際に手足が冷えることが多い。
この他にもいろいろな薬方が用いられますが、この中では五苓散、呉茱萸湯が
繁用されます。
金匱会診療所所長
山田享弘