2011.5.27

                               金匱会診療所薬局長 針ヶ谷哲也

 紫雲膏は漢方軟膏の中で最も有名な軟膏です。世界で初めて全身麻酔を用いた手術(乳癌手術)を成功させた江戸時代の医師・華岡青洲翁が創案した軟膏です。歴史としては外科正宗(1617年・明・陳実功)という書物の白禿瘡門に記載されている潤肌膏(じゅんきこう)に豬脂を加えたものが紫雲膏です。紫雲膏の適応は肌の乾燥、荒れ、潰瘍、増殖性の皮膚異常を目的としていますが、必ずしも乾燥したものに限ることはありません。また、排膿や瘙痒のあるものには奏功しがたいとされていますが、良く効くこともあるので、少量をお試しただいて判断するのがよいと思われます。現在、紫雲膏は湿疹、乾癬、角皮症、水虫、魚の目、胼胝(たこ)、膿痂疹、ニキビ、水疱、イボ、ひび、あかぎれ、あせも、かぶれ、 わきが、円形脱毛症、白癜風、螫刺(虫刺され)、外傷、凍瘡(しもやけ)、褥瘡(床ずれ)、火傷、潰瘍、痔、痔瘻、脱肛、瘭疽 、糜燗など幅広く使用させています。当診療所の紫雲膏は薬剤部が手間暇をかけて、蜜蝋と胡麻油をベースに紫根と当帰を加えて練り上げた手作りの軟膏です。市販されている紫雲膏とはひと味違いますので、是非お試しになっていただきたい伝統のある自慢の軟膏です。

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紫雲膏(しうんこう)について

当診療所 紫雲膏

紫雲膏の構成生薬と効能効果

生薬名  効能効果
 紫根(しこん)  解毒、解熱、殺菌、肉芽形成
 当帰(とうき)  滋潤、血行促進、肉芽形成
 蜜蝋(みつろう)  解毒、止痛、生肌
 胡麻油(ごまあぶら)  止痛、生肌、補皮裂