西洋医学全盛の時代、漢方医学に入り込んだ医師達の動機は、一様なものではありません。 筆者の場合は医学部2年の薬理学教授による医学概論の最後の講義のその又最後の言 「…君達は卒業後は大学に残るにしろ、病院に勤務するにしろ、西洋医学の道を進むのであろうが、東洋医学なる(異質な)ものがあり、機会があれば勉強するように…」によるものでした。 聴いた当初はその教授の専門が薬理学で、講義や実習で種々の機械類の関与した説明がありましただけに、余計にその差違に驚き、なぜ陳腐な医学を評価されていたのかと考えてはおりましたが、不勉強のためもあって、進んだ方向は反対でした。 某大学付属研究所で毒蛇の成分の研究をしていた当時の週1回の外勤で、西洋薬による治療を長期に渡って続けながらも、訴えが一向に軽減されず(筆者の未熟さにもよったのでしょうが)、また副作用に悩まされながらも治療を続行せざるを得ない患者のことが次々と思い出されたのが、別の大学へ転じて、ある時のこと、前述の教授の言とが重なり合って漢方医学を学び、実践したいと考えはじめ、学長に辞職したい旨を話しますと『君は助教授になっていながら、辞めて漢方などに転じるとは何事か』と一喝されたことをつい先日の如くに憶えております。 先輩の紹介のお陰で、中将湯ビル診療所(金匱会診療所の前身)での藤井美樹先生による長年の臨床面のご指導を受けて現在に至っております。 研究所や大学での研究所時代も懐かしいものがありますが、あの時の決断が筆者にとっては当を得たものであり、これからも精進致したいと思っております。
■鎮西弘
日本東洋医学会認定 漢方専門医
昭和40年医科歯科大学医学部卒
室賀昭三先生、藤井美樹先生に師事。
関節疾患等、痛みに対する漢方治療を得意としている。
☆担当曜日 : 第1,3,5木曜(13:30〜16:30)
※ 平成18年6月より診察時間を変更いたしました。