薬草のお話 5 |
最近はハーブがブームになっていますが、その中でもハッカは最もポピュラーなものと言えるでしょう。ハッカはハーブやアロマテラピーでのイメージが強いでしょうが、漢方薬としては中国の唐の時代(695年)の新修本草(しんしゅうほんぞう)という書物に記載され、古くから薬用にされてきました。日本では江戸時代の大和本草(1708年)などに記載されています。また、ハッカは葉をまぶたにつけるとスーッとした清涼感があることからメグサとも呼ばれています。 |
ドクダミは生薬としては十薬、重薬、魚腥草(ぎょせいそう)、じゅう菜などの名前で呼ばれています。ドクダミとは『毒矯み』の意で、昔から民間で毒下しに用いられてきました。十薬の名は貝原益軒が「大和本草」の中で「わが国の馬医これを馬に用いると、十種の薬の効能があるので、十薬と言う」と書いたのがはじまりとされています。 |
ジャノヒゲは山林のへりや草原に自生する多年草で、庭や公園などのにもよく植えられています。細い葉が左右に分かれる姿からリュウノヒゲの別名もつけられています。秋に瑠璃色のきれいな種子を結びます。 |
春の訪れを知らせてくれる花は沢山ありますが、コブシやモクレン、ハクモクレンもそのうちの一つと言えるでしょう。中国ではハクモクレン、モクレンを生薬辛夷の原植物に当てていますが、日本ではその昔モクレンがまだ無かったためコブシ、タムシバを辛夷に当てていました。そのため日本ではコブシを辛夷と書きます。しかし、辛夷は元来中国伝統の生薬で、中国の本草書である本草綱目には『夷は?(つばな)の意味であり、その苞は初生が?のようで味が辛いものである』と書かれています。 |
香附子はカヤツリグサ科(Cyperaceae)のハマスゲ Cyperus rotundus Linne の根茎です。 |
天麻はラン科(Orchidaceae)のオニノヤガラ Gastrodia elata BL. の根茎の外皮を去って湯通しした後に乾燥したものです。オニノヤガラとは鬼の矢の様な形態から出た名前とされています。オニノヤガラはマツやクヌギ、コナラなどの雑木林の木陰に生える寄生植物で、葉が無く、茎も花も黄赤色で緑の部分はありません。 |
キキョウは7月から9月頃までの長い期間美しい花を咲かせ、私たちを喜ばせてくれる秋の七草の一つです。山上憶良(やまのうえのおくら)の秋の七草に詠んだアサガオの花は、長く学者の間で論争されてきましたが、今日ではキキョウになっています。この美しいキキョウですが、花ではなく根を生薬として使用します。 |
酸棗仁はクロウメモドキ科(Rhamnaceae)のサネブトナツメ Zizyphus jujuba Miller (Z. vulgaris Lamarck var. spinosus Bunge) の種子です。サネブトナツメはナツメと同じ科の植物で非常に似ていますが、サネブトナツメの果実は内果皮(核)の部分が発達し、中果皮(果肉)が少ないので、ナツメ(生薬名は大棗)のようには食べられません。また、酸味が強いことから漢名で酸棗(さんそう)と名付けられたとされています。和名のサネブトとは核が大きいことから名付けたものとされています。 |
シソ科(Labiatae)のシソ Perilla frutescens Britton var. acuta Kudo またはチリメンジソ P. frutescens Britton var. crispa Decaisne の葉および枝先を漢方では蘇葉及び紫蘇葉(しそよう)と呼び使用しています。シソが初めて日本に入ってきた当時、人々は食用にと考える前に油として用いる方に関心があったようです。実際に使ってみると当時灯火用に用いていた荏油(えあぶら)より断然優れていました。このためにシソの栽培が盛んになり、油以外のシソの利用法も工夫され、食用、着色料へと広がっていきました。ちなみに梅干しの色はシソのアントシアン色素が梅のクエン酸によって分解され、独特の色になったものです。 |
苦参はマメ科(Leguminosae)のクララSophora flavescens Aitonの根で、しばしば周皮を除いたものです。生薬名である苦参は『苦とは味から、参とは功力から』名付けたものとされています。和名であるクララはこの植物を服用したとき、軽度の中毒症状としてめまいを起こすことよりでた名称(実際に漢方処方で服用するときには滅多に起こりませんので安心してください)であり、原植物の古名をマトリグサと呼びました。 |
生薬・白シはセリ科(Umbelliferae)のヨロイグサ Angelica dahurica Bentham et Hooker の根です。中国の本草書である神農本草経(しんのうほんぞうけい)の中品に記載され、別名・芳香とあります。これは白シの匂いを嗅いでみれば、セリ科の独特な匂いがしてきて何となく想像がつきます。古代の中国の人はこの匂いで鼻や体が養われると言っており、芳香の他にも匂いに関係のある名前があてられています。 |
山薬は別名、薯蕷(しょよ)ともいいヤマノイモ科(Dioscoreaceae)のヤマノイモ Dioscorea japonica Thunberg またはナガイモ D. batatas Decaisne の周皮を除いた根茎(担根体)を乾燥したものです。ヤマノイモ、ナガイモどちらも言わずと知れたとろろ汁の原料で、消化酵素、デンプン、アミノ酸などが含まれており、最近健康番組などでその効果が見直されています。ヤマノイモは日本特産で、本州、四国、九州に分布し、自然に生えることから自然薯(じねんじょ)とも言われ野生であるのに対して、ナガイモは中国原産で畑で栽培されています。 |