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南天が「難を転じる」に通じるので、古来めでたい木とされ、何時頃からか屋敷内にナンテンを植えることが多く、特に日本家屋などでは家の鬼門である北東に造られる厠の傍らに多く見ることができます。 ナンテンの成熟した果実を乾燥したものが南天実で鎮咳薬として咳や喘息・百日咳に用いられ、南天のど飴などが売られています。 ナンテンの成分は果実にドメスチン、イソコリンなどのアルカロイドが含まれ、知覚および運動神経末梢に関し、少量ではモルフィリン様の麻痺、大量では強直の痙攣を起こすとの報告があり、過量では呼吸麻痺の恐れがあるので、むやみに使ってはいけません。 果実は淡白黄色に熟するシロナンテンも同様に用いられますが、一般に赤い実よりも効果が高いといわれ、赤南天を晒して白南天と偽り販売されていることがありますので、注意が必要です。しかし、赤も白も両者の効果は変わらないとの報告もあります。 ナンテンは中国原産で日本・中国・インドに分布するメギ科の常緑低木です。 中国では植物を南天竹・南天燭といい、果実を天竹子とも称しています。 日本では果実以外に、根・葉・茎を薬用以外に民間で利用しています。 祝い事で他家に贈る赤飯にナンテンの葉を載せるのは葉に含まれる青酸配糖体の分解により発生するシアン化水素が赤飯の腐れを防止するものと理解されています。 昔、武士が出陣するとき、ナンテンの葉を鎧櫃の中に納め、南天の枝を床に飾って戦勝を祈願したそうです。このような風習も「難を転じる」「災難を避ける」の言葉から来たのでしょう。 |
水分の多い環境を好んで育ち、品のある清楚な形から水場の仙人と命名されました。また、ギリシャ神話ではナルキッソスという美少年が水面に映った自分の姿に恋をして、水の中に引き込まれて溺れ死にます。その後スイセンになったと言われ、自己陶酔型の人をナルチストという語源になりました。 スイセンはヒガンバナ科の多年草です。地中海沿岸からシルクロードを経て中国に育った品種がシナスイセン、中国から日本に渡来し新しい品種となったのはニホンスイセンです。越前海岸や伊豆半島に野生化しました。現在、スイセンの殆どが観賞用の栽培品です。 春になると、葉の間から長い花茎が直立して伸び、花は通常6弁で、この花特有の黄色い杯状の副花冠(花ビラの内側にある花ビラ状のもの)があります。 花には精油が含有され気品のある香りがあり、ほてり・月経痛・月経不順などの改善に使うことができます。 この花には果実ができないため、鱗茎の株分けで増えます。 スイセンの鱗茎は肩こりや乳腺の腫れ・打ち身・筋肉痛・歯痛などさまざまな痛みを解消する外用薬として用いられてきましたが、誤って食べると嘔吐や腹痛、ひどい場合には昏睡状態から死に至ることもあります。 リコイン・プソイドリコリンなどのアルカロイドを含有しているので、内服するのは絶対厳禁です。 外用には鱗茎をよく水洗いし、いらなくなった陶製のおろし器ですり潰し、ガーゼなどに包んで絞り、絞り汁に適量の小麦粉を加えてクリーム状になるように練ります。患部に伸ばして付け、その上からガーゼを貼ります。患部が赤くなったら取り除きます。 くどいようですが、決して内服しないようにしましょう。 |