漢方のお話 5



第44回:平成13年1月   春の七草

 春の七草をごぞんじですか。 七草を全部いえますか。  
「せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ、これぞ春の七草」と歌で謳われております。 すべて、越冬性の寒さに強い植物です.

せり:セリ科の多年草で自生もあり、栽培もされております。競り合って繁茂するので、この名がつけられました。浸し物、和え物、味噌汁や澄まし汁の実、スキヤキや寄せ鍋の具などに親しまれております。  

なずな:アブラナ科の二年生で自生し、また中国では栽培されています。多数の細かい種を中に持つ逆三角形の袋状の果実からペンペングサ・三味線草という異名があります。ナズナの語源は夏になっても、まだ花が残っているので夏菜。可愛らしいので、撫でたくなるのでナデナからきたのだといいます。セリと同じくお料理に使いますが、薬用には全草に利尿・解熱・止血作用があるといわれています。
 
ごぎょう:キク科多年草のハハコグサで、畑や道端に見られます。株全体に毛があり、毛がほほ毛立っていることから、ホホコグサ転じてハハコグサとなりました。ごぎょうの謂れはわかりません。もちぐさ(ヨモギ)と同様、草もちに使われます。全草をカラッ咳・痰・のどの痛み・利尿薬に使われると民間薬の本に記載があります。

はこべら:ナデシコ科の一年生の植物ハコベで田や畑・道端に自生し、栽培はされていません。小鳥の飼料として使われ、料理としては油いため・おひたし・和え物に使われますが、味噌汁に入れて毎日食べると産婦の乳の出が良くなるとか、葉を炒って乾かし、粉にして塩を混ぜたものをハコベ塩といい、歯磨き粉として使用する。などが知られています。  

ほとけのざ:図鑑に収載されているホトケノザはシソ科の植物ですが、七草の「ほとけのざ」はきく科の二年生タビラコを当てています。ホトケノザは仏の座で、根生葉が丸く生えている形から言われたのでしょう。花のつく前の若葉を味噌汁の具にします。薬用としての記載は見つかりません。
 
すずな:畑に栽培されているアブラナ科二年生の植物カブです。カブと言う名称は食用部の根茎を切り株や頭(冠:かぶら)に、また「すずな」は形が神社でお参りする時に振る鈴の形に見立てたものといわれます。根には消化作用・緩下作用があります。葉にはビタミンA、カルシウムが豊富です。  

すずしろ:広く栽培されるアブラナ科の二年生の植物でおなじみの野菜 大根です。 すずしろは清(すず)白(しろ)で真白い色の意味です。カブと同様な薬効があります。

春の発芽の準備をしているこれらの植物を七草粥として摂取することは青野菜が少なくビタミン不足を起こしがちな冬の間の健康を考えた生活の知恵なのでしょう。(小根山隆祥)



第45回:平成13年2月   栴檀は双葉より芳し

 将来すぐれた人物になる者は子供の時から秀でている素質がある。という諺。
 センダンという名でよばれる植物には全く別の二つの種類がある。
 ひとつは古名をオウチといった樹木で(漢字では棟または樗と書く)センダン科の落葉高木である。街路樹や庭木にされている。
 いまひとつはインドネシアやマレー半島など東南アジア原産の半寄生の常緑高木で日本には野生していないビャクダン科のビャクダンである。これが諺の栴檀である。
 幼樹は他の植物の根に寄生するが葉には葉緑素を持ち、成長すると10mぐらいの樹木となる。
 インドでは古くから佛教の儀礼に香木として使われ、サンスクリット語のチャンダナが漢音に訳されて栴檀(センダン)となった。
 佛典の『観佛三昧経』に「ビャクダンはトウゴマの中に生じ、双葉にならぬうちは香を発しないが、次第に成長し双葉を得て木になろうとすると香気が盛んになる」と述べられているのがこの諺の出典であろう。
 ビャクダンの芯材は赤くて、サンタロールという芳香成分がある。辺材は白色で香りが少ないので、線香や香料や薬用には芯材を用いる。
 中国では檀香といい、理気散寒、止痛の効能があり、胸苦しい、胃が痞える、食欲がない、冷えて胸や腹が痛む時に薬に用いるが、現在日本では薬用にはされていない。
 白檀油(ビャクダン油)をかつては淋病の治療薬とされていた時もあるが、現在ではアロマテラピーで使われている。(小根山 隆祥)



第46回:平成13年3月   落ち椿

 落ち椿と言う語は俳句の季題として、よく使われますが、苔の上や飛び石の上に落ちる椿の美しさは日本的な情景です。しかし、首が取れるように花が丸ごと落ちるのを忌み嫌う人々があり、特に江戸時代 武家の間でハ不吉な花としていたようです。
 日本では春に咲く木という意味で、ツバキ科のツバキに木偏に春の椿という字を使用していますが、本来 中国の椿と言う字の植物はセンダン科の植物で初夏に開花し花も葉も全くツバキと違う樹木である香椿(しゃんちん)のことです。
 ツバキの漢字には椿のほかに海石榴・山茶・都波木などを当ててますが、葉が厚いので厚葉木、艶があるので艶葉木などの語源説があります。
 ツバキは漢方薬としては使いませんが、民間薬では乾燥した花5〜10gを200mlの水で煎じ、2〜3回に分けて飲み、腸出血の救急薬とします。勿論、落ち着いたら医師の診察が必要です。
 なた、滋養・強壮に乾燥した花を細かく刻み、砂糖適量を加えて健康茶として飲みます。便通が整います。
 種子から絞ったツバキ油は灯火用にした時代もありましたが、良質なので現在では頭髪用・食用・外用軟膏基材に利用されています。とくに、アトピー性の皮膚病にシャンプー・ボデイソープに応用されています。(小根山隆祥)



第47回:平成13年4月   和製コーヒー たんぽぽ

 戦争を知らない人の多くなった飽食の時代には考えられないことでしょうが、戦時中コーヒーの代用として、タンポポの根をよく炒って飲んだとのことです。
 春の代表的な植物であるタンポポは「田の菜」という意味で太葉と書かれて奈良時代の「和名抄」に出てきます。
 古くから知られている植物ですが、タンポポの語源についてはいろいろな説があり、はっきりした結論は出ておりません。
 タンポポは花が終わると、特色のある白い毛の球形の果実穂(ホホケ)となり、種子を飛ばします。
 そのホホと「和名抄」のタナとが一緒になってタンポポになっとという説、大名行列の時、先導するタンポ槍に似ているから。とか、ホホケの形が鼓に似ていて、鼓が出す音の連想から、などがあります。
 方言でツツミグサ、ニガナ、チチグサとも呼ばれております。ニガナは苦い菜、チチグサは花茎を折ると乳色の液汁がでてくるのでその名があるのでしょう。
 その名のように、オッパイの出をよくするということで民間薬として用いられています。
 我が国には明治の初め、乳牛の乳の出をよくするために、栽培用にセイヨウタンポポがアメリカから北海道に渡来し、野生化し、昭和の初めには東京の周辺に在来のタンポポと混じって見られるようになりました。
 漢方では根を蒲公英根といい、蒲公英湯として、乳汁分泌不足や乳腺の発育不全に、当帰や牡丹皮などの婦人薬によく使用される生薬と一緒に配合されます。(小根山隆祥)


                                                                

第48回:平成13年5月   田打ち桜に種蒔き桜

 春3月始め、桜の開花予想が毎年気象庁から発表されます。
 これに使われている桜は主として染井吉野が用いられ、東京に於いては靖国神社の桜が標準になっているとか。
 桜の開花は南から北へと移動して行くのですが、その状況が天気図の前線に似ているので、桜前線と言われています。
 宮崎3月25日、京都4月9日、東京4月16日、仙台4月18日、青森5月3日、札幌5月5日が平均の満開日です。
 みちのくの春は遅く、4月の中旬頃から農作業が始まります。農作業の目印になるのが、サクラやコブシで、ことに山形や宮城では種蒔き桜はサクラの咲き始めが籾蒔きの時期、田打ち桜が咲けば水田の田ごしらえを始めると言う。このような暦を自然暦と言います。
 病気にも自然暦のように、ある時期がくると発生する病気があります。例えば、杉の花粉が多く発生する時期はアレルギー性鼻炎が多くなるように。
 野生しているサクラの代表がヤマザクラ。若葉と同時に花がさきます。一方園芸の代表が町や土手に多いソメイヨシノ。葉の出る前に花が咲きます。
 6〜8月頃、樹皮を剥がして日干しにした桜皮は咳に1日量3〜5g煎服します。また、おできには煎服か煎じた液で患部を洗います。
 桜餅はサクラの葉独特のクマリンの匂いで賞味されます。オオシマサクラの葉を塩漬けにして1ヵ年保存する間に葉のクマリン配糖体が徐々に分解されて、芳香物質が生ずるので、餅やだんごに使われます。
 いろは歌留多の「花より団子」の花はサクラのことでしょうか。(小根山隆祥)



第49回:平成13年6月   大根役者と練馬大根

 ご存知の通り、大根役者とは芸の下手な役者のことで、大根の白さを素人並みのシロにあてたとも、また大根はいくら食べても中った験がないことからとも言われています。
 江戸の近郷の練馬で大根が出荷され始めたのは江戸時代の寛文年間〔1611〜1673〕頃からで、江戸の町に練馬大根が広がりました。大根の色や形や練る〔絹を灰汁・石鹸などで煮て柔らかくする〕などの連想から「練馬大根」と言う言葉が白く太く柔らかい足に譬えられるようになりまいた。
 このように親しまれている大根は民間薬でも大いに利用されています。
 大根卸しにして蜂蜜と混ぜて咳止めにしたり、干した大根の葉をお風呂に入れて、冷え性や神経痛を緩和します。
 漢方薬としては種子を莱フク子といって、食中毒の腹痛・食べ過ぎの腹満感・腹鳴・げっぷ・下痢などに、消化作用のある生薬と配合して用いられております。また紫蘇や芥子の種と組み合わされて喘息や気管支炎で痰の多い時・胸苦しい時に使われます。
 因みに、春の七草のすずしろ〔清白できれいな白さを言います〕は大根のことです。
(小根山隆祥)



第50回:平成13年7月 山椒は小粒で

 「山椒は小粒でピリリと辛い」という諺はサンショウの実はごく小さい粒だが、口に入れるとヒリヒリするぐらい辛みをもっている。その心は、身体が小柄であっても、身体が高くなくても、内に優れた才能を持っているものは外観からは想像できない能力を発揮できるので、侮ることは出来ない。ということです。
 この諺と相反するものが「ウド(独活)の大木」。背ばかり大きくなっても、もろくて役に立たないことの諺です。見栄えのみ立派で、中身の無いこと。見掛け倒しで役に立たないような人を言います。あるいは大男で力の弱いもの、元気そうだが病弱の者などに譬えられます。
 ウドは地上部が1年ごとに枯れる多年草ですので、大きく伸びたときは凡そ3メートルに達し、人の背よりも高く、茎は人の腕よりも太くなります。大きくなりますが、木部が発達しない草なので太い茎は冬には枯れ、柱のようには使えません。
 その点サンショウは茎が木になり、擂り粉木になります。
 昔から日本人はサンショウとの付き合いが深く、浅緑鮮やかな若葉は豆腐田楽の木の葉味噌に仕立てられ、早春の味覚には欠かせない香りを添えております。
 サンショウは北海道から九州までの日本列島と朝鮮半島南部に野生しているミカン科の植物で落葉低木。その茎には刺があり、刺が2つ相対しているサンショウと互い違いにあるイヌサンショウとがあります。イヌサンショウは匂いがサンショウよりも落ちます。
中国にはサンショウはなく、非常に近似のカホクサンショウがあり、その果実の果皮を蜀椒または蓁椒といい、腹満をとる作用があり、漢方薬に配合されております。(小根山隆祥)



第51回:平成13年8月 末摘花

 「源氏物語」の段の小見出しに葵上,桐壺,夕顔など植物の名が使われております。その一つに末摘花があり,その段は醜女の話ですが,該当する植物の本当の名はベニバナで花を摘んでベニにすることから末摘花の別名を持っております。
 エジプトなどを原産とするキク科の一年草で、6月になると花の一部の管状花が始め黄色で徐々に紅色に変わってゆく美しい花です。
 紅色のカーサミン(水に不溶)と黄色のサフロールイエロー(水に溶ける)の二種の色素を含有しています。
 現在,ドライフラワーにして観賞用。食品の着色料。ベニバナの種子からはべにばな油をとり、食品や医療品原料(リノール酸系)として利用されてます.
 源氏物語の時代には観賞用ではなく,紅をとる花として認識されていました。
 因みに,紅(クレナイ)は呉の藍でつけられました。詰まり,日本の藍に対して,中国の藍のことです.
 一般に、紅花は始めサフロールイエローを水洗いして除き、灰などのアルカリ性カーサミンを抽出した後に酸性にすると紅色の沈澱(紅泥)が生成します。
これがカーサミンの組成品で、これを布地の染料に利用します。更に精製したカーサミンを化粧品に利用します。
 生薬 紅花は花が紅色に変化した頃に採取乾燥して、主に婦人薬に用いられます。
 現在,日本では山形県が産地として有名です.(小根山隆祥)



第52回:平成13年9月 柿の種

 早く芽を出せ柿の種
猿蟹合戦のおとぎ話に出てくる言葉。幼い時に聞いた方もいることでしょう。
握り飯を猿の持っていた柿の種と交換した蟹は「早く芽を出せ柿の種,出さぬと鋏でちょんぎるぞ」と脅かして育てるのですが,柿の実が成熟すると成熟した柿の実を猿に奪われ、投げられた青い柿の実にぶつかって死んでしまう.。子蟹が蜂と栗と臼の手助けで敵討ちをするという物語です。
 このおとぎ話は江戸時代の中頃の絵本「猿蟹大合戦」を明治以後、国定教科書にとりあげられて、また親から子へ昔話として日本各地で語り継がれてきました。
 昔の農村では小正月の行事として、主にカキやモモ・ナシ・アンズなどの果樹に小さい傷をつけ「成るか成らぬか,成らねば切るぞ」と脅かして成長を促す木脅し・成木攻めという呪術儀礼が在ったそうです。
 「柿が赤くなると医者が青くなる」という諺もあり、民間薬としていろいろな薬効があるます。
 柿を食べた後に残る柿の蔕はシャックリ止めの妙薬で,蔕5グラムにひね生姜を同量加えて、約水200mlで煎じます。
 また血圧降下にも乾燥葉1日20gを煎じてお茶代わりに飲みます。
 漢方薬でも柿蔕(シテイ〕といって、吃逆(しゃっくり)の治療に配合されます。
 
 柿を食べると思い出す句が 「柿食えば鐘が鳴るなり法隆寺」 (小根山隆祥)



第53回:平成13年10月 蓼食う虫もすきずき

 辛い蓼を食べる虫があるように、人の好みもさまざまで一口には言えないものという諺。
 狂言・所作事にも出てくる言葉なので、室町時代から言いならされた諺なのでしょう。
 辛ら味のある蓼はタデオナールという辛味成分をもつヤナギタデ(マタデ・ホンタデ)の仲間だけで大部分のタデは辛くありません。
 タデオナールを含まないヤナギタデに似たイヌタデは辛ら味が無く役立たないので、イヌとつけられましたが、この植物はままごと遊びにつかわれるアカノマンマという名前で親しまれております.このイヌタデの若葉は茹でて水に浸し,和え物・浸し物として食し、また民間薬では害虫にさされた時など、葉を揉んでつけると効果があり、更に煎じて服用すると回虫駆除など薬としての効用も幾つかあり,決して役立たない植物ではありません。
 その他、昔の子がおやつにかじったというスカンポ(スイバ・ギシギシ)、茶人が好んで床の間に活けるミズヒキ,染料の藍をとるアイタデ、漢方薬の下剤に配合される大黄(ダイオウ)、蕎麦の原料ソバも皆タデ科の植物です。
 刺身につく、芽たではベニタデの子葉で濃い赤紫色をしていて辛味が強く賞用されております。 
 これらタデ科の植物はいずれも共通して、葉は互生、茎の節部に鞘状の托葉があるなどの特徴があり、野原を歩いていて、花がなくてもタデ科だと気がつきます。(小根山隆祥)


 
第54回:平成13年11月 酒を暖めて紅葉を焚く

 白楽天という唐の詩人を昔から日本人は大変好み,平安時代の「和漢朗詠集」にも白楽天の詩を多く載せています。
 その中の秋興の詩に「林間に酒を暖めて紅葉を焼く。石上に詩を題して緑苔を掃う」とあり、これが出所です。謡曲「紅葉狩り」にも引用されているのを見ると、当時の人が口ずさんでいたのでしょう。
 一般に多く見られるカエデはタカオモミジ(イロハカエデ)で、日本列島から朝鮮半島南部、中国大陸では揚子江河口付近に分布しています。
 掌状にさけた葉の形から蛙手(カエルデ)と呼ばれ、カエデになりました。
 掌状に裂けた小葉の数から区別することが出来ます。
 コミネカエデは5裂、タカオモミジは5〜7裂、ヤマモミジは7〜9裂、オオイタヤメイゲツは9〜11裂で、メグスリノキ、トウ〔唐〕カエデは3裂、ハナノキ、チドリノキは単葉で分裂しません。
 葉はいろいろですが、カエデ科に共通しているのは葉が対生で、果実は左右一対の長い翅があることです。
 花札には,赤く染まったイロハカエデの下に鹿の立っている図柄があります。昔からモミジとシカは秋の景物の一対でした。それが転じて鹿肉のことをモミジといいました。
 モミジとは草木の葉が秋になって、もみ出されるように黄や赤に変わる紅葉現象のことで樹木名ではなく、草紅葉と言う使い方もあります。温帯に分布する落葉喬木カエデ科の植物名としても使われているということです。
 最近ブームとなったメグスリノキは山地に生育し、葉は三出複葉、小葉は楕円形で波状鈍歯を有し下面は葉柄と共に毛を密生する植物で、樹皮を煎じて洗眼に用いています。
 カナダの国旗になっているトウ〔糖〕カエデは樹液からメイプルシロップを取ります。
 唐カエデも糖カエデも葉は3裂です。(小根山隆祥)



第55回:平成13年12月 今年は南瓜の当たり年
 

 容貌のみにくいのを凸凹したニホンカボチャの形にたとえて,周りを見回しても美形のいないのを形容した江戸の頃からの嫌味ないいぐさ。 文化五年江戸の森田座で三世坂東三津五郎が所作事を演じた時のセリフ「蓼食う虫もすきずきとやら、今年や南瓜の当たり年」といったのが大受けして市中に流行したとのことです.
 カボチャは一年生植物。茎は通常つるになり、花は大きく、果肉の黄色色素は大部分がカロチノイドです。多食すると色素が沈着して、皮膚が黄色くなるので、本草綱目には「多食すれば脚気・黄疸を発す」と真正の黄疸と誤認していますが、害はありません。
 冬至カボチャといって、冬至にカボチャを食べる習慣は保存できるカボチャを冬期のビタミンA補給剤として、目の病気の予防に役立てた、昔の人の生活の智慧です。
 脂肪油を40%内外含有している種子は酒のつまみに南瓜子、或はカボチャの種として売られております。その種子をすり潰し,水を加えて1回約30gを服用すると,駆虫に効果があります。
 我が国には今から300余年前、天文年間に九州へ伝えられ、全国に普及しました。
 関東ではトウナス、関西ではナンキン,九州ではボウブラなどと呼ばれています。
 トウナスは唐の国の茄子。ボウブラはポルトガル語のAbobraからの転訛。
 植物名カボチャは東南アジアのカンボジアからポルトガル人によって伝えられたので当時はカンボジアが原産地と考えられていましたが、実際は中南米が原産です。(小根山隆祥)