漢方のお話 1 |
「では診察をしますから、お腹を出して診察台に寝てください。」と言いますと、患者さんはもじもじして、「私、皮膚病ですが、お腹は悪くないんです。」と言われることがあります。「でも、漢方は、薬を内服していただきますので、お腹をみないと薬を決められないんですよ。」と、私は苦し紛れに申します。これは本当は半分うそでして、実はどんな病気でも、どうして治したらよいか、どんな薬を使ってもらいたいかというサインがお腹に現れているのを探るのです。これが漢方の腹診という大事な診察方です。それは、お腹の中にある病気だけではなく、鼻、耳、皮膚の病気でも同じです。ですから、漢方の医療を受ける時は、お腹の出やすい服装でおいでください。 また、手首の動脈を押さえて脈を診ますが、そうすると「脈が速いですか」とか「幾つありますか」と尋ねる患者さんがあります。「そうですね、早くも遅くもありませんが、沈んだ細い脈ですね。」と答えると、患者さんは目をぱちくりさせています。何のことかわからないからでしょう。ですが、医師の方では、この脈で、その人が虚弱で、冷え性の体質であることが分かります。「風邪をひいたらしい」と言って来た患者さんも、脈を診れば風邪をひいたばかりなのか、数日経っているのかが分かり、その違いによって治療方針、即ち使う漢方薬を区別できるのです。漢方の脈診は、脈拍の数を数えているだけでなく、その人の体質や病気の性情を推し量るデータなのです。(山田光胤) |
良い食事の組み合わせ
「一に養生、二に薬」という言葉がありますが、多くの人々はそれを守らず、病気になったら薬にたよって治そうとします。私達の健康は日常の食事に大きく左右されます。極端にいえばすべての病気は食事のあやまりから起こってくるといってもいい過ぎではないでしょう。 食べ物はいろいろな栄養素がうまくそろって調和し、始めて人間の健康に生きてゆくのです。 肉食、砂糖、白米、タケノコが酸性食の代表。これらのみ食べていると血液が酸性になり、いろいろな病気の原因になると聞いております。ひじき、ワカメなどはアルカリ性食品です。酸性食品の肉にアルカリ性食品のキャベツ、肉を食べたら生野菜を沢山とりご飯を食べずにパンを少々、米を食べるなら肉を余りとらないで植物性の蛋白質、豆、とうふ、みそ、ゆばなどの組み合わせがよいのです。魚料理と野菜の煮たものなどの日本料理は理想的な食品といわれています。デザ−トは食後にでます。食前にアイスクリ−ムやコ−ヒ−、ケ−キなどを食べては食事は消化しません。世の中には栄養不良でいるよりも食べ過ぎて体をこわしている人の方がずっと多いのです。寝る前に腹がふくれると安眠できません。腹八分目がよいと昔からいわれてます。腹八分目は体も軽く、頭の回転もよいのです。腹八分目を保つにはよく噛むことです。 食事の他に正しい運動と明るい積極的な態度、いつも感謝の気持ちを持つなども健康を保つ秘訣でしょう。(小根山隆祥) |
じめじめと暑い日本の夏の正しい過ごし方といえば、ビールと枝豆でしょうか。しかし、ビールも枝豆も痛風のある方にとっては、ちょっとつらいものがあります。この場合、冷たい焼酎と冷や奴できまりです。肝臓が悪い方は麦茶でがまんしてください。なお、冷え性で胃腸が弱い方(漢方でいう、陰証で、虚証の人)は、夏でも熱燗の方がよいでしょう。 さて、今月は、夏に付き物の?あせもについてです。漢方であせもの治療をする場合には、その患者さんを診察して、その患者さんにあった薬を使うわけですが、私の場合、桂枝加黄耆湯(けいしかおうぎとう)などという処方を使うことが多いようです。 また、昔からあせもに対する民間療法がいくつか知られております。一般の方がすぐに手に入るものから、生薬を扱っている薬局で買わなければならないものまでありますが、私のお薦めとしては、桃の葉などがよく効くようです。ただし、これは生の桃の葉が効果的なようです。 以後いくつかの民間療法をあげておきます。 1.キュウリの切り口でこする。 2.桃の葉、または升麻(サラシナショウマの根茎)の煎じ汁で洗う。 3.風呂に桃の葉を入れて入浴する。この場合、桃の葉は少量の塩でよく揉んで汁が出た状態で入れるとよい。 4.天花粉(キカラスウリの根)、葛根、甘草の三味を粉にして、布で包んでふりつける。 5.苦参(クララの根)50gをガーゼの袋に入れ、水600mlに入れて約30分煮沸し、その汁で汗疹の部位を湿布または、拭く。 (山田享弘) |
夏の土用の丑の日にはうなぎ屋の宣伝か「夏負けにうなぎ」と言い伝えられています。また、うなぎと梅干しは合わせて食べてはいけないとも言い伝えられています。 |
今年の夏は冷夏という予報は見事なほどにはずれ、東京ではまだ梅雨のさなかの7月の初めに猛烈な暑さが襲い、その後も、お盆の時期をのぞいてはとても暑い夏でした。 |
暑さが続くとどうしても食欲がおちます。そんな夏の食卓に欠かせないのが漬け物。それも紫紺色のナスはもっとも夏らしいものといえます。 |
気温も下がり、空気も乾燥してくると風邪をひく人が増えてきます。風邪というととても単純な病気のように思っている人が多いですが、同じ風邪でも人によって症状も経過も千差万別で、個々の病人に対してそれぞれ適した治療を行う漢方の、最も力を発揮できる病気の1つでもあります。また、現代医学ではいまもって適切な風邪の治療法というものはありません。日本漢方の原典であります「傷寒論」という書物は後漢の時代に編纂されたとされておりますが、この書物は急性熱性疾患の治療法を病気の経過をおって述べたものであります。「傷寒論」に述べてある治療法は、現在の風邪にも非常に良く当てはまり、漢方での風邪の治療とは、ほとんどが「傷寒論」に沿ったものであります。有名な漢方薬に「葛根湯」という薬がありますが、この薬も「傷寒論」に記載されている薬です。 |
12月23日頃は冬至です。この日は太陽が最も南に位置し、一年で最も昼間の短い日で、日暮れの早い日です。どの民族も太陽の生命力の復活と五穀豊穣、植物の成長を祈る祭りをこの日に行ってきました。 |