山薬(さんやく)について



                 
金匱会診療所薬局長 針ヶ谷哲也

 
とろろ蕎麦や山芋の千切りなどで馴染みの深いヤマイモは、生薬では山薬(さんやく)または薯蕷(しょよ)と称し、漢方薬に配合されています。山薬はヤマノイモ科(Dioscoreaceae)のヤマノイモ Dioscorea japonica Thunberg またはナガイモ D. batatas Decaisne の周皮を除いた根茎(担根体)を乾燥したものです。
 ヤマノイモ・ナガイモどちらも言わずと知れたとろろ汁の原料で、ジアスターゼやカタラーゼなどの消化酵素、デンプン、アミノ酸などが豊富に含まれており、消化促進や疲労回復に効果的です。最近ではネバネバ成分のムチンに血糖値の急な上昇を抑える効果やコレステロール値を下げる作用などが報告されています。
 ヤマノイモは日本特産で、本州、四国、九州に分布し、自然に生えることから自然薯(じねんじょ)とも言われ野生品であるのに対し、ナガイモは中国原産で日本の畑で栽培され、銀杏芋(関東では大和芋)、捏芋(つくねいも)、長芋、一年芋などの栽培品種があります。最近では栽培品の自然薯も売られてますが、野生品の自然薯の方が貴重で高価なことは当然の事でしょう。これは漢方薬にも同じ事が言えますが、新鮮で生きが良い野生の生薬は匂いが強く効果も強いと考えられます。このため自由診療(保険診療ではなく自費の診療)である当診療所では、原料コストは掛かりますが出来る限りこのような生薬を選んで治療に使用するように心掛けております。
 山薬には強壮、強精、鎮静、解熱、止瀉などの効があり、痩せて元気がない状態や暑さや寒さからくる疾患、諸々の不足(様々な疲労消耗)に有効で、胃腸虚弱、消化不良、糖尿病、下痢などに応用されます。
 山薬が含まれる漢方処方には八味地黄丸(はちみじおうがん)、牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)、六味地黄丸(ろくみじおうがん)、薯蕷丸(しょよがん)、参苓白朮散(じんれいびゃくじゅつさん)、啓脾湯(けいひとう)などがあります。
 山薬は余り白すぎず(イオウで漂白してない)、食べたときにヤマイモ特有の味がして粘りのあるものを良品と考えております。

 

2011. 8. 9

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〜山薬を食す(医食同源の意)〜

                      金匱会診療所薬剤部 津田有梨香

山薬には上記のようなさまざまな効果があります。
そんな嬉しい効果を期待して、身近な漢方薬・ヤマイモを
食べたくなりませんか?
そこで、夏バテの時・暑くて食欲の無い時にも食べられる簡単なヤマイモ
レシピを紹介します!
(レシピというほどのものではないですが・・・(^_^;))

良い機会なので、スーパーで簡単に手に入る長芋と大和芋の2種類を
同じように料理して食べ比べてみました。


長芋  大和芋   
   
↓皮をむくと・・   ↓  
  ★大和芋のデコボコした部分は
  スプーンを使って剥くと楽です。 
     
 長芋のすりおろし 大和芋のすりおろし   →だし汁&生卵と混ぜて
   
     
 長芋の千切り  大和芋の千切り  
  →お醤油やポン酢をかけて♪ 
     
 ちょっと一手間かけて・・

長芋
 

大和芋
★乱切りしたヤマイモに小麦粉を
 つけて油で表面が軽く色づくまで
 揚げます。  


 


 

そのままでも 塩をつけても
豆板醤+マヨネーズor明太子+マヨネーズ
を混ぜてソースを作って、つけて食べても
おいしいですよ♪



長芋に比べて粘りが強く味が濃厚なのが大和芋の特徴ですね。
ただし、大和芋は手が痒くなりやすいので注意が必要です。

加熱しても長芋はシャリシャリ感が残って食感が良いですが、
大和芋はホクホクとしてジャガイモのような食感になります。

どちらを召し上がるかはお好みですが、このような漢方食材を積極的に
食卓に取り入れ、体調管理に役立てるのは大事なことだと思います。