高齢者の風邪
                     
                                金匱会診療所 松田邦夫

高齢者の特徴は、
 @診断が確定しにくく根治困難、症状の除去が治療の主目的
 A生体反応の個人差が大きく、その差が加齢により増大(免疫力低下)       
 B薬の代謝・反応性が若年者と異なり、副作用が出やすい
 C個々の症状自体は軽微でも、複数の臓器にわたる疾患が同時にあることが多い
  (多臓器障害)
 D心身医学的配慮の必要性
 などである。

漢方的に見た高齢者の特徴は、
 @乾燥傾向
 A新陳代謝低下傾向
 B低体温傾向
 C胃腸の衰え
 D下半身の衰え(腎虚)
 などである。
 
高齢者の風邪で注意すべき事は、
 @症状が軽微なこと
 A脱水
 B治りにくくこじれやすいこと
 C余病の併発
 D肺炎
 などである。
 
治療は、引き始めに、熱いうどん(鍋焼きうどん)、葛湯(くずゆ)などを食べ、その後布団をかぶって寝る。(以下同じ)おろしショウガ+ねぎのみじん切り+大根おろし+少量の味噌または醤油+熱湯。おろしショウガ+砂糖+熱湯が有効である。安静、保温、保湿、とくに水分補給が大切で、入浴を禁止する。飲食は消化の良い温かいもの(お粥、番茶など)を摂り、呼吸器に持病のある人は特に対応に注意が必要である。緊急入院して水分補給(輸液)を要する場合もある。
 
高齢者に頻用されるかぜの漢方薬としては、
 @香蘇散(こうそさん)
 A桂枝湯(けいしとう)
 B麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
 C真武湯(しんぶとう)
 などがある。
 
かぜの予防には
 @無理をしないこと。特に寝不足に注意すること
 A平素から水分が不足しないようにすること
 Bうがい励行、マスクの使用
 C予防接種
 などである。

2011.7.1

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